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きいたんとルー きいたんの小さい理由。

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きいたんとルー きいたんの小さい理由。




昔々、あるところに、
きいたんというたべこが住んでいました。
たべこというのはちいさい赤ちゃんのことです。
ちみことも呼ばれます。
食べて、寝て、にこにこして、
みんなに大事にしてもらうのがお仕事です。
きいたんもお兄ちゃんやお姉ちゃんに、
お世話をしてもらい、毎日幸せに暮らしていました。

きいたんは体が小さくて、
毛がぱやぱやとしか生えていないので、
よく、1歳と間違えられるんですけど、
先日、2歳になりました。
誕生日パーティーをしてもらったきいたんは、
にこにこご機嫌でした。
「これで、あたちもおねえちゃんよ。」
きいたんは自分をたべこだと思っていますが、
即ち赤ちゃんのことだとは判っていなかったからです。
当然、誰もきいたんをお姉ちゃんとして、
扱ってくれません。
「きいたんは1歳じゃなぁい。
 きいたんは、2歳!」
プンプン怒って、文句を言ったんですけど、
お兄ちゃんたちは判ってくれません。
「そんなに違わないじゃない。」
お兄ちゃんたちからすれば、1歳の子も、2歳の子も、
小さいたべこさんなんですが、全然違います。
1年の差は、大きいのです。
「1歳は赤ちゃん! 2歳はおねえちゃん!
 きいたんは、おねえちゃん!」
きいたんは、一生懸命怒ったんですが、
どうしても判ってもらえませんでした。

困ったきいたんは、仲良しのルーに相談しました。
「どうちて、きいたんは、
 赤ちゃんだって言われちゃうのかねえ?」
きいたんは他の子に比べれば泣きません(けれども、
泣くと決まったらとんでもない大声で泣きます)し、
お喋りも上手です。
お着替えだって、ちゃんと出来ます。
お姉ちゃんとのお約束も守れます。
ご飯だって、自分で食べられるんです。
赤ちゃんでは無いのです。
きいたんの困った顔を見て、
ルーはパタンパタンと尻尾を揺らしましたが、
口の周りをぺろっと舐めると、事も無げに言いました。
「それは、きいたんが小さいからだよ。」

ルーは当たり前の顔をしていますが、
きいたんには、納得いきませんでした。
「でも、ルーだって、小さいよ?」
「ボクはお兄ちゃん! 小さくない!」
途端にルーは怒り出しましたが、きいたんが言うとおり、
ルーだって小さいわんこなのです。
そのルーがお兄ちゃんなのに、
どうしてきいたんは赤ちゃんなんでしょう。
ルーはプンスカ怒りながら、もう一度言いました。
「きいたんは、髪の毛が生えてないじゃないか。
 足の爪だってちっちゃいし、ボクとは違うよ。」
きいたんは、ルーの足の裏をみてみました。
大人の犬と同じスパイクみたいなツメが生えています。
きいたんの手は、ずっと小さくて楓の葉っぱみたいです。
お兄ちゃんやお姉ちゃんみたいに大きな物は持てません。
自分の頭を触ってみました。
細い髪の毛が、パヤパヤしてるだけです。
ルーには灰色や黒や白い毛が、ふさふさに生えています。

きいたんは、黙ってお兄ちゃんたちのところにいって、
だっこして欲しいと手を伸ばしました。
そこでお兄ちゃんの一人が抱き上げてあげると、
きいたんは、お兄ちゃんの頭に手を伸ばしました。
きいたんとは違ってしっかりした、
黒くてつやつやの髪の毛が、たくさんはえています。
「おにいちゃん、どうちて、
 お兄ちゃんのかみの毛は黒いのに、
 きいたんのは、ぱやぱやなの?」
「それは、お前がまだ、小さいからだろ。」
お兄ちゃんの答えを聞いて、
きいたんはがっかりしました。
「どうちたら、ふさふさの毛、生えてくんの?」
「大きくなったら・・・沢山寝たら生えてくるだろ。」
お兄ちゃんは日が変わって何回も寝たらと言う意味で、
沢山といったのですが、
きいたんは長い時間寝れば、
毛が生えてくるに違いないと思いました。
そこできいたんは、その夜早くお布団に入って寝ました。

次の日の朝、きいたんは少しは毛が生えてきたかと、
鏡を見てみましたが、
昨日と同じ、ぱやぱや髪の毛でした。
きいたんはがっかりしてお父さんを起こしました。
「おとうたん、おとうたん、」
「何だよ。まだ早いだろ。」
お父さんの体はきいたんよりずっと大きくて、
きいたんが押しても、ゆらゆら揺れるだけで動きません。
「おとうたん、
 どうしておとうたんはおおきいのに、
 きいたんは小さいの?」
「そのうち、大きくなるよ。」
寝ぼけ眼のお父さんの手を引っ張って、
きいたんは自分の手と比べてみました。
お父さんの手は大きくて、
きいたんの手がすっぽり入ります。
「おとうたん、
 どうして、きいたんの手は大きくないの?」
「そのうち、大きくなるよ。」
言いながら、お父さんは大あくび。
頭をガシガシ掻きました。
黒い髪はボサボサです。
「おとうたん、
 どうしてきいたんの髪の毛はぱやぱやで、
 ふさふさになんないの?」
「そのうち、生えてくるよ。」
「そのうちって、いつ?」
「そのうちだよ。」

お父さんは、そのうちと言うばかりです。
けれどもきいたんは、
いくら待っても大きくならないのです。
我慢できなくなったきいたんは、大きな声で叫びました。
「そのうちじゃ、わかんない!」
「そのうちは、そのうちだろ。
 まったくもう、何でそんなこと聞くんだ。」
叫ばれて、お父さんも困った顔で、
大きなため息をつきました。
赤ちゃんはそんな急に大きくなるわけではないからです。
ゆっくり時間が過ぎていくうちに、
気がつくと大きくなっているものだからです。
けれども、それではきいたんは納得できませんでした。
きいたんは、お姉ちゃんなのです。
赤ちゃんではないのです。

「きいたんは、おねえちゃん!
 なんできいたんは、ちっさいの?
 なんできいたんの手は、ちみっさいの?
 なんできいたんの髪の毛は、ぱやぱやなの?」
でも、きいたんにも判ってきました。
きっと、きいたんがまだ赤ちゃんだからなのです。
きいたんは、やっぱりお姉ちゃんではないのです。
悲しくて、そのまま泣き出したきいたんに、
お父さんも大きな声を出しました。
「そんなの、その方が可愛いからに決まってるだろ!」

お父さんの答えが思っていたのと違ったので、
きいたんは鼻をすすりながら、少し考えました。
「きまってんの?」
「そうだよ。」
「きいたんは、ちみっさくてかわいいの?」
「そうだよ。」
「ちょっかあ。」
それなら、仕方ありません。
可愛いのが一番大事だからです。
お姉ちゃんも、
お兄ちゃんもきいたんを可愛いとほめます。
つまり、そういうことなんです。

自分が小さいことに納得したきいたんは、
また、ご機嫌になりました。
逆にお父さんは周囲の人たちから、
物言いたげな白い目で見られましたが、
特に気にしませんでした。
そんなわけで、きいたんはちみっさいたべこさんのまま、
いつもにこにこ、幸せに暮らしているんですって。

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津路志士朗
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